修理事例・お客様の声

iPhone 14 Pro 水没・他店の電池交換後に起動不能|CPU移植でLINEデータ復旧【大阪府】

水没後に他店でバッテリー交換され起動しなくなったiPhone 14 Pro。CPUなどのICを健全な基板へ載せ替えて起動を回復し、LINEのデータをバックアップした事例
結論

水没したiPhone 14 Pro(大阪府 K・M様・海外勤務)です。他店に持ち込んだ時点では起動していましたが、バッテリーを交換されたあと一切起動しなくなり、「1ヶ月ほどどこかへ送る」と案内されて不安になったお客様が、AI(Gemini)で当店を知ってご来店されました。診断の結果、基板は各所がショートし、電源ICも損傷していました。データを残すため、CPUなどのICを健全な基板へ載せ替える方法を取り、端末は起動を回復。海外勤務で連絡手段にしているLINEのデータを、店頭でバックアップできました。

分解したiPhone 14 Pro。ディスプレイを開いた内部にバッテリーとA16 Bionic搭載のロジックボードが見え、フレームに水没の痕が残っている
お預かりしたiPhone 14 Proを開いたところ。中央がA16 Bionicを搭載したロジックボード、左がバッテリー。フレームの内側に水分が乾いた白い痕が残っています。

ご相談の経緯──「1ヶ月どこかに送る」と言われ、AIに相談して当店へ

大阪府からお越しのK・M様は海外で勤務されており、ご家族や職場との連絡はLINEが中心だそうです。iPhone 14 Proを水没させてしまい、まず近くの修理店に持ち込まれました。その時点では、端末は起動していたとのことです。

その店でバッテリーを交換されたあと、端末は一切起動しなくなりました。お店からは「直らないので、1ヶ月ほどどこかへ送って対応する」という案内を受けたそうです。端末を1ヶ月手放すこと、どこへ送られるのか分からないこと。この2点が怖くなったK・M様は、生成AI(Gemini)に「水没したiPhoneのデータを残して直せる店」を相談し、当店にたどり着かれました。

ご希望は明確でした。「端末が直らなくてもいい。LINEのデータを取り戻したい」。海外とのやり取りの記録が、すべてその中にあったからです。

この事例のポイント
  • 水没した端末は、起動していても内部に水分が残っていることがあります。その状態で電源を入れ直す・部品を交換して通電すると、基板がショートします。
  • 電源ICが損傷して起動しなくなっても、CPUとストレージが無事ならデータは残っています。健全な基板へICを載せ替えることで、データにたどり着けます。
  • 当店は外部へ送らず、心斎橋の店舗内で基板の診断からIC移植まで完結します。

症状と経過──他店では起動していた。バッテリー交換のあと、一切起動しなくなった

お預かり時の状態とお客様からの聞き取りは次のとおりでした。

  • 電源ボタンを押しても、充電器をつないでも、画面・振動・音のいずれも反応がない
  • 他店に持ち込んだ時点では起動していた(お客様の申告)
  • 他店でバッテリー交換が行われ、その後に起動しなくなった(お客様の申告)
  • フレーム内側に、水分が乾いた白い痕。ディスプレイ側のコネクタ周辺にも腐食の跡

水没後に一度は起動していた端末が、通電をきっかけに起動しなくなる。この経過は、水没修理の現場では珍しくない典型的なパターンです。理由は基板の構造にあります(後述)。

診断──基板の至る所がショート。電源ICも損傷していました

ディスプレイとバッテリーを外し、ロジックボードを取り出して確認します。

取り出したiPhone 14 Proのロジックボード表面。コネクタとシールドが並ぶ積層基板
取り出したロジックボードの表面。iPhone 14 Proは2枚の基板を貼り合わせた積層構造で、外から見える面がきれいでも、層間の状態は分かりません。
iPhone 14 Proのロジックボード裏面。コネクタ群とシールドケースが見える
同じ基板の裏面。表・裏ともに目立つ焼損は見えませんが、電気的な確認では複数の電源ラインが短絡していました。
治具に固定したiPhone 14 Proの基板の拡大。コネクタ脇のIC周辺に水没による白い残留物と腐食が見える
基板を治具に固定し、顕微鏡下で確認しているところ。コネクタ脇のICの周囲に、水没由来の白い残留物と腐食が見えます。こうした箇所が短絡の起点になります。

電気的に確認したところ、基板の至る所でショート(短絡)が起きていました。電源を各回路へ分配する電源ICも損傷しており、端末が一切起動しない直接の原因はここでした。水分が残った基板に通電されたことで、被害がここまで広がったと考えられます。

基板そのものを修復する方法もありますが、ショートが多数の箇所に及び電源ICも損傷している状態では、修復しても別の箇所から不具合が出る可能性が残ります。お客様のご希望は「データ」でしたので、基板を直すのではなく、データを持つICを健全な基板へ移す方針をご提案し、ご了承いただきました。

なぜ水没後の通電が致命傷になるのか──積層基板と「分層」

iPhone 14 Proのロジックボードは、2枚の基板を上下に重ねて貼り合わせた積層構造です。外から見えるのは表と裏の2面だけで、2枚の間(層間)には分解しただけでは手が届きません。水没した端末では、この層間に入った水分が抜けずに残ります。

この状態で電源を入れる、充電する、あるいは新しいバッテリーをつなぐと、水分が残った回路に電気が流れてショートします。今回のお客様の端末が、他店でのバッテリー交換のあとに起動しなくなった経過は、この仕組みで説明がつきます。バッテリーを替えた行為そのものではなく、水分が抜けていない基板に通電されたことが問題でした。

当店では水没端末の基板を扱う際、必要に応じてこの積層基板を上下2枚に分離する「分層」を行い、層間の水分と腐食を直接確認・除去します。分層をせずに乾燥や洗浄だけで済ませると、層間の水分はそのまま残ります。分層の実際の作業は、iPhone 12 防水ケースで海水没した事例で写真つきで紹介しています。

水没したiPhoneで、やってはいけないこと
  • 電源を入れる・入れ直す:内部に水分が残った状態で通電すると、回路がショートします。
  • 充電する:「充電すれば動くかも」が、電源ICを損傷させる最も多いきっかけです。
  • 乾かして様子を見る:外側が乾いても層間の水分は抜けません。時間がたつほど腐食が進みます。
  • 水分が残ったまま部品交換だけ行う:新しいバッテリーやパネルをつなぐことも「通電」です。基板の状態を確認せずに部品を替えると、今回のように起動しなくなることがあります。

データを残す方法──CPUなどのICを健全な基板へ載せ替える

iPhoneのデータは、ストレージ(NANDメモリ)に保存されています。ただしストレージはCPUとペアで暗号化されているため、ストレージだけを別の基板に付けてもデータは読めません。CPUとストレージ、そしてペアになっている関連ICを揃えて移す必要があります。

今回は、損傷した基板からCPU・ストレージ・関連ICを取り外し、同じiPhone 14 Proの健全な基板(ドナー基板)へ顕微鏡下で載せ替えました。載せ替えた基板を端末に戻して起動すれば、データはそのまま元の状態で読めます。基板を修復するより工程は多くなりますが、ショートが広範囲に及んだ今回のような端末では、この方法がデータにたどり着く最も確実な道でした。

同じ「他店の修理後に起動しなくなった」ご相談では、iPhone 17 Proがリンゴループになった事例Galaxy Z Fold7 水没で煙が出た事例も参考になります。水没後の充電で基板に穴が開いた例はiPhone 11 Proの事例をご覧ください。

結果──起動を回復し、LINEのバックアップへ

復旧したiPhone 14 Proの画面。LINEのバックアップが進行中で、メッセージのバックアップが完了している
起動を回復した直後、店頭でLINEのバックアップを開始。トーク(メッセージ)のバックアップが完了し、写真などのデータのバックアップが続いています。
修理の結果

ICを載せ替えた基板で端末は起動し、ロック解除後にLINEを含むアプリとデータがそのまま表示されました。店頭でLINEのトーク履歴のバックアップを実行し、メッセージ分の完了を確認。写真などのデータもそのままです。初期化もバックアップからの復元も行っていません。海外とのやり取りの記録は、すべてK・M様の手元に戻りました。

お客様の声(K・M様)

「一時は諦めかけていましたが、修理屋さんを選んで正解でした。データも全部残って助かりました。ありがとうございました。」

当店の修理現場から

現場の一言
  • 「他店で修理してから起動しなくなった」水没端末のご相談は、当店に日常的に届きます。共通するのは、基板の水分を確認・除去する前に通電されていることです。修理の内容より、通電の順番が結果を決めます。
  • 水没後の端末で「バッテリーが悪い」と見えることはあります。ただ、水没端末で最初に確認すべきはバッテリーではなく基板です。当店は水没端末では、基板の状態を確認する前に新しい部品をつなぐことはしません
  • 生成AIで調べてご来店になるお客様が増えています。「1ヶ月預かり」「どこかへ送る」と言われたときに、店内に設備を持ち、自社で基板修理とデータ復旧を行う店かを確認する。それだけで結果は変わります。

当店は総務省登録修理業者(R000002/T000002)として、またISO 9001:2015認証のもと、2009年から心斎橋の店舗で修理を行っています。年間6万件以上の修理実績があり、基板修理・データ復旧は外部へ送らず自社ラボ内で完結します。データ復旧の「復旧率」という数字の読み方についてはデータ復旧率のカラクリで、他店修理後にお持ち込みいただく典型例は非正規修理の失敗事例で解説しています。iPhoneの耐水性能の考え方はAppleの公式ページiPhone 7以降の防沫・耐水・防塵性能についてもあわせてご確認ください。

よくあるご質問(水没・他店修理後の起動不能・LINEデータ復旧)

Q. 水没したiPhoneが他店の修理後に起動しなくなりました。データはもう戻りませんか?

起動しなくなった原因が基板側にあっても、CPUやストレージ(NANDメモリ)そのものが壊れていなければ、データを取り戻せる可能性は残っています。今回のiPhone 14 Proは各所がショートし電源ICも損傷していましたが、CPUなどのICを健全な基板へ載せ替えることで起動し、LINEのデータをバックアップできました。ただし端末の状態によっては復旧できない場合もあるため、分解して診断したうえでご説明します。

Q. 水没後にバッテリーを交換すると、なぜ起動しなくなることがあるのですか?

iPhone 14 Proのロジックボードは2枚の基板を貼り合わせた積層構造で、内部(層間)に入った水分は分解しただけでは抜けません。その状態で新しいバッテリーをつなぐと、水分が残った回路に電気が流れてショートし、電源ICなどが損傷します。他店に持ち込んだ時点で起動していた端末が、バッテリー交換の後に起動しなくなったという経過は、この仕組みと一致します。

Q. 水没したiPhoneは、まず何をすればいいですか?

電源を入れない、充電しないの2点を守ってください。電源が入っていれば切り、ケースやSIMトレイを外して水分を拭き、そのまま早くお持ちください。乾かして様子を見る、充電して確認する、といった行動が基板の損傷を広げます。詳しい手順はiPhone水没時の対処法のページにまとめています。

Q. CPU移植とはどのような修理ですか?

損傷した基板から、データの読み出しに不可欠なCPUとストレージ(NANDメモリ)、およびペアになっている関連ICを取り外し、同じ機種の健全な基板(ドナー基板)へ顕微鏡下で載せ替える作業です。データはストレージの中に残っているため、載せ替え後の基板で起動すればデータはそのまま使えます。基板そのものを修理するより工程は多く、当店では水没や電源IC損傷で基板の修復が難しい場合に選択します。

Q. LINEのトーク履歴は、水没したiPhoneからどのように取り戻すのですか?

iPhone本体を起動できる状態に戻し、LINEアプリからトーク履歴のバックアップを取ります。LINEのトーク履歴は本体に保存されているため、端末が起動しなければ取り出せません。今回は起動を回復したあと、店頭でバックアップが進むところまで確認しました。バックアップ後は新しい端末へ引き継げます。

Q. 他店で「1ヶ月ほど預かる」と言われました。それほどかかるものですか?

店舗で診断や基板修理を行わず、外部へ送って対応する場合は、往復の輸送と先方の待ち時間が加わって長期になることがあります。当店は心斎橋の店舗内に基板修理・データ復旧の設備を置き、自社で作業するため、外部へ送ることはありません。所要期間は端末の状態で変わりますので、診断のうえでお伝えします。

Q. 復旧できるかどうかは、どの時点で分かりますか?

分解して基板の状態を確認し、必要に応じて分層(積層基板を2枚に分離)してから判断します。CPUやストレージ自体が損傷している場合は復旧が難しく、その場合も診断の結果をご説明します。復旧率を数字でお約束することはしていません。

Q. 他店で修理した後の端末でも見てもらえますか?

はい。他店で修理した後に起動しなくなった、症状が変わった、といったご相談も受け付けています。分解時に確認できた物理的な所見(ネジの欠品、コネクタの状態、部品の交換痕など)はそのままお伝えします。今回のように、水没後に部品交換だけを行った端末はデータ復旧の難易度が上がるため、早めにご相談ください。

Q. 大阪以外からでも依頼できますか?

全国から郵送で受け付けています。水没端末は電源を入れず、充電もせずにそのまま梱包してお送りください。診断結果と作業内容はお電話またはメールでご説明したうえで進めます。

用語の解説(積層基板・分層・電源IC・CPU移植・ドナー基板)
  • 積層基板(サンドイッチ基板):2枚の基板を上下に重ねて貼り合わせたロジックボードの構造。iPhone Xシリーズ以降のナンバリング機種で採用され、iPhone 14 Proもこの構造。外から見えるのは表と裏だけで、間の層は見えない。
  • 分層(二枚におろす):積層基板を上下2枚に分離する作業。層間に入った水分・腐食は分層しないと確認も除去もできない。
  • 電源IC(PMIC):バッテリーからの電力を各回路へ分配・管理するチップ。水分が残った状態での通電で損傷しやすい。損傷すると端末は起動しない。
  • ショート(短絡):本来つながらない回路同士が水分や腐食で導通し、過大な電流が流れる状態。ICの焼損や電源が入らない原因になる。
  • CPU移植(IC載せ替え):損傷した基板からCPU・ストレージ・関連ICを取り外し、同機種の健全な基板へ顕微鏡下で載せ替える作業。データはストレージ側にあるため、載せ替え後に起動すればデータが読める。
  • ドナー基板:IC移植の受け皿となる、同じ機種の健全な基板。
  • NANDメモリ(ストレージ):写真・アプリ・LINEのトーク履歴などが保存されているチップ。CPUとペアで動作するため、単体で取り出してもデータは読めない。

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この記事の監修
執筆:スマートドクタープロ編集部監修:古賀潤一郎(代表)

スマートドクタープロ(運営:株式会社クレア/法人番号 8120001165987)。総務省登録修理業者(電気通信事業法:T000002/電波法:R000002)・ISO 9001:2015認証。基板の電源IC・充電IC・漏電まで診断・修理できる技術力と、年間6万件以上の修理実績をもとに、編集部が作成し、代表・古賀潤一郎(大阪心斎橋本店)が監修しています。

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6万件以上
(年間)
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