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iPhone 12 防水ケースで海水没|基板を分層しCPU移植でデータ復旧【神戸市】

防水ケースの中に海水が侵入して水没したiPhone 12を、積層基板の分層とCPU・NANDメモリの移植でデータ復旧した事例|スマートドクタープロ大阪心斎橋

海に落としていないのに、海水没。──防水ケースを信じてポケットへ。気づいたときには、ケースの中に入り込んだ海水で端末は水浸しでした。海水は真水の比ではない速度で基板を腐食させ、「とりあえず充電」がとどめを刺します。それでも、データを取り戻せる可能性は残っています。本記事は、電源ICまで損傷した重度海水没のiPhone 12から、基板を「二枚におろして」データを救出した実際の作業記録です。

0120-960-690
海水没は時間との勝負です。通電せず、まずお電話ください。

この事例の結論

機種iPhone 12
状態海水没(防水ケース内に海水侵入)+充電による電源IC損傷。起動不可
ご依頼内容端末の復活ではなくデータの救出
作業特殊洗浄 → 基板の分層 → CPU・NANDメモリ・関連IC群を健全なドナー基板へ移植
結果起動・データ確認に成功。写真等のデータを保持したまま復旧

ご注意:本事例は復旧に成功したケースですが、CPUやNANDメモリ自体が物理的に損傷している場合など、端末の状態によっては復旧できないことがあります。結果を保証するものではありません。

ご相談の経緯──防水ケースの中で、海水にシェイクされた

神戸市からお越しのU・M様。先週の日曜日、海のレジャー中の水没でした。端末は防水ケースに入れていたものの、ケース内にわずかに海水が侵入していることに気づかず、そのまま行動を続けたことで、ケースの内側で端末が海水に浸かり続け、揺すられる状態になっていました。帰宅後、動作がおかしいことに気づいて充電を試みましたが、起動しなくなりました。

その後、AIチャット(ChatGPT)に「海水没したiPhoneのデータを取り戻したい」と相談したところ当店が候補として案内され、ご来店いただきました。ご依頼は明確でした。「端末はもう買い替える。中のデータだけ取り戻したい」。

診断──塩の結晶、層間まで達した腐食、そして電源IC

開封すると、内部は一面の塩害でした。

海水没したiPhone 12の内部。塩分が結晶化して全面に白く付着している
開封直後。海水の塩分が結晶化し、内部全体を白く覆っていた。

海水の塩分が結晶化し、フレーム・シールド・バッテリー表面まで白く覆っています。

iPhone 12のバッテリー表面とカメラ周辺に達した塩分結晶と腐食
バッテリー表面やカメラ周辺にも塩分が回り、金属部は変色していた。
iPhone 12のSIMトレイ周辺に残る海水由来の腐食痕
SIMトレイ周辺。水の通り道になった箇所ほど腐食が進んでいた。
iPhone 12のTaptic Engine周辺とフレームに固着した塩の結晶
Taptic Engine周辺。フレームの隙間に塩が固着している。
iPhone 12のディスプレイ内側に広がった塩分の結晶
ディスプレイの内側にも塩が回り込んでいた。

海水没が真水の水没と決定的に違うのは、塩分と電気伝導性です。塩水は電気を通しやすく、通電中の基板上で意図しない回路を作ってショートを起こします。さらに乾いた後も塩分が残り、湿気を吸って腐食を進行させ続けます。

そして本件では、水没後に充電が行われていました。海水を含んだ基板への通電は最悪の一手です。診断の結果、電源ICが損傷していることを確認。元の基板をそのまま生かす修理は不可能と判断しました。

なぜ「充電」がとどめになるのか

水没後の端末で最もやってはいけないのが通電・充電です。濡れた基板に電流を流すと、本来つながってはいけない回路が塩水を介してつながり、ICを焼損させます。水没直後なら救えたはずのデータが、充電の一回で失われるケースは珍しくありません。水没したら、電源を入れない・充電しない・乾かして様子を見ない。 この3つを守って、一刻も早くご相談ください。

作業──基板を「二枚におろす」

iPhone 12のロジックボードは、2枚の基板を上下に重ねて貼り合わせたサンドイッチ構造(積層基板)です。外から見えるのは表と裏だけ。腐食が最も進行しやすい層間(2枚の間)には、分解しただけでは手が届きません。

そこで当店では、この積層基板を上下2枚に分離する「分層」を行います。私たちが「二枚におろす」と呼んでいる工程です。

表面の洗浄だけではなぜ層の間に届かないのか、その仕組みは水没スマホが洗浄だけで直らない理由で詳しく解説しています。

iPhone 12の積層ロジックボードを上下2枚に分層した状態
分層後。上下2枚に分けて、初めて層の間を確認できる。

分層した基板がこちらです。層間に入り込んだ海水により、黒く腐食が進行していました。外観からは決して見えない、しかし着実にデータを蝕んでいく損傷です。

分層したiPhone 12の基板。層の間まで進行した海水由来の黒い腐食
層の間まで海水が回り、黒く腐食していた。この基板の再生はできない。

元基板の再生は不可能な状態でしたが、データそのものはNANDメモリの中に残っています。iPhoneのデータは暗号化されており、CPU(SoC)とNANDメモリなどのIC群が揃って初めて読み出せる仕組みです。そのため、健全なドナー基板へ、CPU・NANDメモリ・復号に必要なIC群をセットで移植しました。

結果──起動、そしてデータの確認

移植後の基板を組み上げて起動を確認。ご来店いただいたその日のうちに、写真をはじめとするデータがそのまま残っていることをお客様と確認できました。海水にシェイクされ、充電で電源ICまで失った端末からの復旧です。

海水没から復旧したiPhone 12。移植した基板で起動し、画面表示とタッチ操作が戻っている
移植した基板で起動を確認。画面表示とタッチ操作が戻った。
復旧したiPhone 12のロック画面と、取り外した腐食部品。お客様の写真はモザイク処理をしている
ロック画面まで復帰し、写真データが残っていることを確認できた(お客様の写真はモザイク処理をしています)。左は端末から取り外した部品。

いっぽうで、端末から取り外した部品は、ディスプレイ・バッテリー・カメラ・充電コネクタ・スピーカーに至るまで、そのほとんどが塩分で腐食し、再使用できない状態でした。「端末はもう買い替える」というご判断は、この状態を見れば妥当なものです。

海水没で腐食したiPhone 12の取り外し部品。ディスプレイ・バッテリー・カメラ・充電コネクタなどが塩で覆われている
取り外した部品。塩の結晶と腐食に覆われ、ほとんどが再使用できない状態だった。

なお、Apple正規のサポートでは基板レベルの修理は行われず、重度水没は本体交換の案内が基本です。本体交換ではデータは戻りません。「データを取り戻す」という目的に対しては、基板を開いて中身を救い出す以外の道はありませんでした。

当店の修理現場から

現場の一言
  • 夏場は水没のご相談が集中します。当店では先月・今月の2ヶ月で200件以上の水没修理を行っており、海・プール由来のご相談が目立つ時期です。
  • 今回のような「防水ケースを過信した海水没」は毎年夏に必ず発生するパターンで、防水ケースは装着の僅かなズレやパッキンの劣化・砂噛みで簡単に浸水します。iPhone本体の耐水性能も「防水」ではなく、海水や経年劣化は想定されていません(詳しくはApple公式の耐水性能に関する案内をご参照ください)。
  • 当店は総務省登録修理業者(R000002/T000002)として、またISO 9001:2015認証のもと、2009年から心斎橋の店舗で修理を行っています。
  • 基板修理・データ復旧はすべて自社ラボ内で完結するため、外注による数週間の待ち時間──その間も腐食は進行します──がありません。

海水没したら──やること・やってはいけないこと

すぐやること
  • 電源を切る(入っているなら)
  • SIMトレイを開けて水を出す
  • 表面の水分を拭き取り、そのまま専門店へ
やってはいけないこと
  • 充電・通電(本件のように電源ICを損傷させます)
  • ドライヤーで乾かす(塩分は乾いても残り、腐食は進行します)
  • 米びつ・乾燥剤で数日放置(時間経過そのものが最大の敵です)
  • 分解を伴わない自己洗浄(層間には届きません)

よくあるご質問

Q. 防水ケースに入れていたのに、なぜ水没したのですか?

防水ケースは装着のズレ、パッキンの劣化や砂噛みで容易に浸水します。さらに一度入った水はケース内に留まるため、端末が水に浸かり続ける状態になり、かえって被害が拡大することがあります。

Q. 海水没は普通の水没と何が違いますか?

海水は塩分を含むため電気を通しやすく、通電中のショートを起こしやすいうえ、乾いた後も塩分が残って腐食が進行し続けます。真水の水没より時間的猶予が短く、重症化しやすいのが特徴です。

Q. 水没後に充電してしまいました。もうデータは戻りませんか?

充電により損傷が広がっている可能性は高くなりますが、本事例のように電源ICが損傷していてもデータを救出できたケースはあります。それ以上の通電を止めて、できるだけ早くご相談ください。

Q. 「分層」とは何ですか?

iPhone 12など近年のiPhoneが採用する、2枚重ねの積層基板を上下に分離する作業です。腐食が進みやすい層間を直接処置するために必要な、基板修理の中でも高難度の工程です。

Q. CPUやNANDメモリを移植すると、なぜデータが戻るのですか?

iPhoneのデータはNANDメモリに保存されていますが暗号化されており、元の端末のCPUと関連IC群が揃わないと読み出せません。これらを一式、健全なドナー基板へ移植することで、データを元通り扱える状態に戻します。

Q. 依頼すれば必ず復旧できますか?

いいえ。CPUやNANDメモリ自体が物理的に損傷している場合など、復旧できないケースもあります。当店では有償の診断で損傷状態を確認し、正式なお見積もりをご提示したうえで作業に進みます。

Q. 遠方からでも依頼できますか?

全国対応の郵送修理を承っています。海水没は時間との勝負のため、到着後速やかに診断・洗浄に着手します。

Q. Apple Storeに持ち込むのとは何が違いますか?

Apple正規サポートでは基板レベルの修理は行われず、重度水没は本体交換が基本のため、データは戻りません。データの救出が目的の場合は、基板修理に対応した専門店への相談が選択肢になります。

用語集(積層基板・分層・NANDメモリ・電源IC)
  • 積層基板(サンドイッチ基板):2枚の基板を上下に貼り合わせた構造。iPhone X以降の多くの機種で採用。
  • 分層:積層基板を上下2枚に分離する作業。層間の腐食処置や部品移植の前提となる工程。
  • NANDメモリ:写真やアプリデータが保存されるストレージチップ。データは暗号化された状態で記録される。
  • CPU(SoC):端末の頭脳にあたるチップ。データの読み出しに不可欠で、NANDと事実上ペアで機能する。
  • 電源IC(PMIC):電力を各回路へ分配する管理チップ。水没後の通電で損傷しやすい。
  • ドナー基板:部品移植の受け皿となる健全な基板。
  • マイクロソルダリング:顕微鏡下で行うIC単位のはんだ作業。

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この記事の監修
執筆:スマートドクタープロ編集部監修:古賀潤一郎(代表)

スマートドクタープロ(運営:株式会社クレア/法人番号 8120001165987)。総務省登録修理業者(電気通信事業法:T000002/電波法:R000002)・ISO9001:2015認証。基板の電源IC・充電IC・漏電まで診断・修理できる技術力と、年間6万件以上の修理実績をもとに、編集部が作成し、代表・古賀潤一郎(大阪心斎橋本店)が監修しています。

総務省
登録修理業者
電気通信事業法:T000002
電波法:R000002
ISO 9001:2015
年間修理実績
6万件以上
(年間)
掲載情報は公開日時点の内容です。Appleの仕様変更・iOSアップデート・法令改正などに応じて、技術品質管理室が定期的に内容を見直し・更新しています。