
階段の上から下まで落としてしまったiPhone 17(愛知県 S・K様・郵送)です。筐体は曲がってうねり、画面は液漏れで何も見えず、電源もまったく入らない状態でした。複数の店舗に持ち込んでも起動せず、データを残したい一心で生成AI(ChatGPT)に相談し、当店へご連絡・郵送いただきました。診断の結果、基板には衝撃とショートによる穴とクラックが入り、ICもはがれかけていました。データを残すため、CPUなどのICを健全な基板へ載せ替えて起動を回復。写真・連絡先などのデータはそのままで、通信経由のバックアップが取れる状態でお返ししました。衝撃で損傷したオーディオICの修理は、バックアップ後に検討いただく形にしています。
ご相談の経緯──階段の上から下まで。複数の店舗でも起動せず、AIに相談
愛知県にお住まいのS・K様が、iPhone 17を階段の上から下まで落とされました。拾い上げた端末は筐体が曲がり、画面は液漏れを起こして表示が見えず、電源を入れても何の反応もありませんでした。
S・K様は複数の修理店に持ち込まれましたが、どの店でも起動させることはできなかったそうです。それでも中の写真や連絡先をあきらめきれず、「データを残したい」という一心で生成AI(ChatGPT)に相談し、起動しないiPhoneの基板修理とデータ復旧を店内で行っている当店を知って、ご連絡をいただきました。愛知県からの郵送でのご依頼です。
- 落下で筐体が曲がるほどの衝撃は、画面だけでなく基板にも及びます。今回は基板に穴とクラックが入り、ICがはがれかけていました。
- 起動しない原因が基板の損傷でも、CPUとストレージが無事ならデータは残っています。健全な基板へICを載せ替えることで、データにたどり着けます。
- 複数の店舗を経ても部品交換などの手が加えられていなかったため、基板の状態がそのまま保たれていました。これが復旧の条件を残しました。
- 通信系(ベースバンド・Wi-Fi)は生きていたため、通信経由のバックアップが可能な状態でお返ししています。
症状──筐体の曲がり・画面の液漏れ・まったく起動しない
お預かりした時点の状態は次のとおりでした。
- 電源ボタンを押しても、充電器をつないでも、画面・振動・音のいずれも反応がない
- 画面は液漏れを起こし、黒いにじみが広がって表示が見えない
- フレームが波打つように曲がり、側面から見ると歪みがはっきり分かる
- 複数の店舗に持ち込んだが起動しなかった(お客様の申告)。部品交換などの処置は受けていない
階段を転がり落ちた端末は、1回の衝撃ではなく段ごとに何度も衝撃を受けます。筐体がうねるほど変形している場合、中の基板が無傷であることはまずありません。画面の液漏れは表示部品の損傷で、起動しない原因とは別です。画面を交換しても起動は戻らないため、診断は基板から始めます。
診断──基板に穴とクラック。ICもはがれかけていました
ディスプレイとバッテリーを外し、ロジックボードを取り出して顕微鏡で確認します。
確認できたのは次の3点です。
- 基板に穴:強い衝撃と、その後のショート(短絡)で基板の一部が焼け、穴が開いている
- クラック:穴の周囲から基板にひびが走っている。内部の配線が切れている可能性が高い
- ICのはがれ:衝撃でICの一部が基板から浮き、接続が途切れかけている
穴とクラックが入った基板は、個々の部品を直しても基板そのものの配線が信頼できません。別の箇所から不具合が出る可能性が残り、修復しても安定して使える状態にはなりにくい損傷です。お客様のご希望は「データを残すこと」でしたので、基板を直すのではなく、データを持つICを健全な基板へ移す方針をメールでご説明し、了承をいただいてから作業に入りました。
なお、落下後に電源が入らない症状の見分け方はiPhoneの電源が入らないときの原因と対処で、落下でフレームが曲がって画面に食い込んだ例はiPhone 15 落下で縦線・タッチ不能になった事例で解説しています。
iPhone 17の基板は2階建て──はんだの点の1つ1つが接点です
iPhone 17のロジックボードは、2枚の基板を上下に重ねて貼り合わせた2階建ての構造です。上下の基板は、縁に沿って並ぶ無数のはんだの点でつながっています。顕微鏡写真の周囲に見える銀色の点がそれで、1つ1つが上下をつなぐ接点です。
この構造では、落下の衝撃で基板がわずかにたわんだだけでも接点が切れます。今回のように穴やクラックが入れば、その周囲の接点はまとめて失われます。接点を直すには、2枚の基板を分離する分層、はんだの点を打ち直すリボール、顕微鏡下のマイクロソルダリングといった、基板そのものを扱う工程が要ります。
- 画面やバッテリーの交換は、部品を外して付け替える作業です。基板の接点を直す工程は含まれません。
- 2階建ての基板で接点が切れた端末は、部品を替えても起動しません。店内で基板を扱えない店では、基板の故障は外注か本体交換しかありません。
- 当店は分層・リボール・IC移植を心斎橋の店舗内で行います。今回の端末も、基板の状態を見てから「直す」か「ICを移す」かを判断しました。交換屋ではなく修理屋です。
データを残す方法──CPUなどのICを健全な基板へ載せ替える
iPhoneのデータは、ストレージ(NANDメモリ)に保存されています。ストレージはCPUとペアで暗号化されているため、ストレージだけを別の基板に付けてもデータは読めません。CPUとストレージ、そしてペアになっている関連ICを揃えて移す必要があります。
今回は、穴とクラックの入った基板からCPU・ストレージ・関連ICを取り外し、同じiPhone 17の健全な基板(ドナー基板)へ顕微鏡下で載せ替えました。載せ替えた基板を端末に戻して起動すれば、データはそのまま元の状態で読めます。
同じ方法でデータを取り戻した例は、iPhone 15 他店修理後も起動せず、CPUの亀裂を修復してデータ復旧した事例や、iPhone 15 Pro 復旧業者の見積68万円からCPU・NAND修復で復旧した事例をご覧ください。
結果──起動を回復。データはそのまま、通信経由でバックアップできる状態に
ICを載せ替えた基板で端末は起動し、写真・連絡先・アプリのデータはそのまま確認できました。ベースバンド(モバイル通信)とWi-Fiのモジュールは損傷がなく、iCloudなど通信経由のバックアップが可能な状態です。一方、強い衝撃でオーディオICが損傷しており、音声は出ません。S・K様のご希望はデータでしたので、まずバックアップを取っていただき、オーディオICの修理は追加修理としてその後に検討いただく形でお返ししました。画面は液漏れのため、表示が確認できる状態に交換しています。
「直った」と「元どおり」は同じではありません
今回の端末は、起動してデータが読み出せる状態になりました。これはデータを残すという目的に対しては修理の完了です。ただし音声は出ないままで、元どおりに使える状態ではありません。
当店では、診断の時点でどこまで戻せる見込みかをメールでお伝えし、了承をいただいてから作業に入ります。損傷が複数の箇所に及ぶ端末では、「まずデータを確保する」「残りの症状は追加修理で」と段階を分けるほうが、データを失うリスクを下げられます。すべてを一度に直そうとして作業を重ねることは、基板への負担を増やします。
- 電源ボタンを長押しし続ける・充電を繰り返す:クラックが入った基板に通電を重ねると、ショートが広がります。今回の基板の穴も、衝撃に加えてショートで広がったものです。
- 曲がった筐体を手で戻そうとする:中の基板とバッテリーにさらに力がかかります。バッテリーが変形すると発熱・発煙の危険があります。
- 画面だけを先に交換する:起動しない原因が基板にある場合、画面を替えても起動しません。費用だけがかかります。
- 複数の店で分解と通電を繰り返す:基板の状態を確認せずに部品交換や通電を重ねると、復旧の条件が失われていきます。今回は手が加えられていなかったことが、復旧につながりました。
当店の修理現場から
- 落下で起動しなくなった端末のご相談で、最初に確認するのは画面でもバッテリーでもなく基板です。筐体が曲がるほどの衝撃では、基板のどこかに穴・クラック・ICの浮きが出ていることが少なくありません。
- 基板に穴やクラックがある場合、その基板を直して使い続けることはおすすめしません。データを残す目的なら、健全な基板へICを移すほうが結果が安定します。
- 生成AIに「起動しないiPhoneのデータを残したい」と相談して当店にたどり着くお客様が増えています。遠方からの郵送でも、診断結果と到達見込みはメールでお伝えし、了承をいただいてから作業します。
当店は総務大臣に登録された登録修理業者(R000002/T000002)として、またISO 9001:2015認証のもと、2009年から心斎橋の店舗で修理を行っています。顕微鏡下の基板修理は年間2,000件以上、持ち込みと郵送はおよそ半々で、沖縄・奄美の離島から北海道まで全国からお送りいただいています。メーカーでの修理をご検討の場合はAppleの修理サービス(公式)もあわせてご確認ください。
よくあるご質問(落下で起動しない・筐体の曲がり・データ復旧・郵送)
Q. iPhoneを階段から落として電源が入りません。データは残っていますか?
落下で起動しなくなった端末でも、データが保存されているストレージ(NANDメモリ)とCPUが壊れていなければ、データを取り戻せる可能性があります。今回のiPhone 17は基板に穴とクラックが入り、ICもはがれかけていましたが、CPUなどのICを健全な基板へ載せ替えることで起動し、データを確認できました。ただし落下の強さや当たりどころによってはストレージ自体が壊れていることもあり、分解して診断するまで断定はできません。
Q. 本体(フレーム)が曲がっています。そのまま修理できますか?
フレームの曲がりそのものより、曲がるほどの衝撃が中の基板にどう伝わったかが問題です。今回は基板に穴とクラックが入っていました。曲がった筐体に基板を戻しても安全に使えないため、当店ではデータを残すことを優先し、ICを健全な基板へ移す方法を取りました。筐体の歪みが大きい場合は、そのまま使い続けることはおすすめしません。
Q. 複数の修理店で「起動できない」と言われました。それでも見てもらえますか?
はい。起動しない端末のご相談は、他店で診てもらった後でも受け付けています。今回の端末は他店で部品の交換などの手が加えられておらず、基板の状態がそのまま保たれていたことが、復旧につながりました。起動しない端末は、むやみに通電や部品交換を重ねる前に、基板の状態を確認することが先です。
Q. 画面が液漏れして何も見えません。画面交換で直りますか?
画面の液漏れは表示部品の損傷で、画面交換で表示は戻ります。ただし今回のように端末がまったく起動しない場合、原因は画面ではなく基板側にあります。画面だけを交換しても起動しません。当店ではまず基板を診断し、起動できる状態を作ってから、表示や音声など残りの症状を順に確認します。
Q. 「健全な基板へICを載せ替える」とはどのような作業ですか?
損傷した基板から、データの読み出しに不可欠なCPUとストレージ、およびペアになっている関連ICを取り外し、同じ機種の健全な基板(ドナー基板)へ顕微鏡下で載せ替える作業です。データはストレージの中に残っているため、載せ替えた基板で起動すればそのまま読み出せます。基板そのものを修復するより工程は多く、穴やクラックで基板の修復が難しい場合に選択します。
Q. 部品交換が中心のお店では、なぜ基板の修理ができないのですか?
iPhone 17の基板は2枚の基板を重ねた2階建て構造で、上下は無数のはんだの点でつながっています。この点が1つでも切れると起動に影響し、直すには基板を分離する分層や、はんだの点を打ち直すリボール、顕微鏡下のマイクロソルダリングが要ります。画面やバッテリーの交換は部品を付け替える作業で、これらの工程を含みません。店内で基板を扱う設備と技術者がない場合、基板の故障は外注か本体交換になります。当店は心斎橋の店舗内で分層からIC移植まで行っています。
Q. 音が出ないまま返却されたのはなぜですか?
衝撃でオーディオICが損傷しており、起動とデータの読み出しはできても音声が出ない状態でした。お客様のご希望はデータを残すことでしたので、まず起動を回復してバックアップを取っていただくことを優先し、オーディオICの修理は追加の修理として、バックアップ後に検討いただく形にしました。先にすべてを直そうとして作業を重ねるより、データを確保する方が優先順位は上です。
Q. バックアップはどのように取ればいいですか?
今回はベースバンド(モバイル通信)とWi-Fiのモジュールが生きていたため、iCloudなど通信経由のバックアップが可能な状態でお返ししました。当店では端末をパソコンに接続してデータを複製・保管することは行っていません。バックアップはお客様ご自身で取っていただきます。取り方が分からない場合は、返送時にご案内します。
Q. 郵送で依頼するとき、診断や料金はどう決まりますか?
起動しない端末は、開けて診断しないと原因も修理できるかどうかも分かりません。診断は有償で、診断結果(データが残る見込み・修理内容・料金)はメールでご連絡し、了承をいただいてから作業に入ります。了承がない場合は作業せず、診断終了時の状態で返送します。基板・データ系の料金は端末の状態で変わるため、案件ごとにご提示しています。
Q. 愛知県など遠方からでも依頼できますか?
はい。沖縄・奄美の離島から北海道まで、全国から郵送で受け付けています。持ち込みと郵送はおよそ半々です。起動しない端末は、充電や電源操作を繰り返さず、そのままの状態で梱包してお送りください。郵送修理の流れと送り方は郵送修理のページにまとめています。
用語の解説(2階建て構造・クラック・リボール・CPU移植・ベースバンド・オーディオIC)
- ロジックボード(基板):CPU・ストレージ・電源IC・通信モジュールなどを載せた本体の中枢。落下の衝撃で穴やクラックが入ると、起動しなくなる。
- 2階建て構造(積層基板):2枚の基板を上下に重ねて貼り合わせたロジックボードの構造。iPhone X以降のナンバリング機種で採用され、iPhone 17もこの構造。上下は縁に並ぶはんだの点でつながる。
- リボール:切れたり潰れたりしたはんだの点(ボール)を取り除き、新しいはんだの点を打ち直す作業。接点を元に戻すために行う。
- マイクロソルダリング:顕微鏡下で行うIC単位のはんだ作業。基板修理・IC移植の基本工程。
- クラック:基板に入ったひび。表面に見えなくても内部の配線が切れていることがあり、通電するとショートの原因になる。
- ICのはがれ:強い衝撃で、基板にはんだ付けされたICが一部浮いた状態。接続が途切れて機能しなくなる。
- CPU移植(IC載せ替え):損傷した基板からCPU・ストレージ・関連ICを取り外し、同機種の健全な基板へ顕微鏡下で載せ替える作業。データはストレージ側にあるため、載せ替え後に起動すればデータが読める。
- ドナー基板:IC移植の受け皿となる、同じ機種の健全な基板。
- ベースバンド:モバイル通信(4G/5G)をつかさどる部分。今回は損傷がなく、通信経由のバックアップができた。
- オーディオIC:スピーカー・マイク・受話音声を制御するIC。衝撃で損傷すると音が出ない・通話で声が聞こえない症状になる。
- 液漏れ(画面):表示パネルが衝撃で内部破損し、黒いにじみや帯が広がって表示が見えなくなる状態。基板とは別の損傷。
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スマートドクタープロ(運営:株式会社クレア/法人番号 8120001165987)。総務省登録修理業者(電気通信事業法:T000002/電波法:R000002)・ISO 9001:2015認証。基板の電源IC・充電IC・漏電まで診断・修理できる技術力と、年間6万件以上の修理実績をもとに、編集部が作成し、代表・古賀潤一郎(大阪心斎橋本店)が監修しています。
登録修理業者電気通信事業法:T000002
電波法:R000002

6万件以上(年間)